数オリ予選勉強法(JMO,JJMO)

すうけんHPを閲覧いただきありがとうございます。
ここでは数研で実際に行っている数学オリンピック(JMO)、およびジュニア数学オリンピック(JJMO)の対策についてまとめてみました。
初めて数学オリンピックに参加する方や予選のレベルアップを図りたいという方の参考になれば幸いです。

もくじ

JMO予選の特徴

JMOは主に高校生が参加する大会です。
予選を初めて受験する人は知っておくべき、3つの大きな特徴があります。

① 出題範囲は、整数論、平面図形、場合の数(、代数)!
問題は典型的な問題ではなく、応用問題が多く難しいです。
授業の数学とは比べ物にならないぐらいです。
時にテクニックや発想が必要であることもあります。

これらの分野の基本問題はすらすら解けるようにしましょう。
逆に言えば、微分積分や複素数平面といった分野は勉強する必要はありません。

② 3時間で12題を解く!
中高生の受ける多くの数学の試験の試験時間は1時間~1時間半程度でしょう。
大学入試でも3時間という長い時間を設けている大学はめったにありません。
しかし、数学オリンピックは3時間という試験時間を設けています。ただ、数学オリンピックの問題は実際面白く、そして難しいので3時間でも足りないと思うかもしれません。

12問の問題は基本的に解きやすい順に並んでいるのですが、それはあくまでも目安としてください。
「中盤の苦手な問題よりも、後ろの得意分野の問題の方が先に解けた!」ということも十分あり得ます。ですので、一通り問題には目を通しましょう。

 解答は答えのみを書く方式
ちょっとしたミスが予選通過のボーダーの点に届くかどうかに大きく影響を与えます。
十分な実力を持っていても、ミスをしては元も子もありません。
問題文は注意深く読み、3時間の間に合計3回ずつ読むぐらいにしたほうが良いです。
「さんざん悩んだ挙句、そもそも考えるべき問題が違った…」なんて、恐ろしいですよね。
終了1時間前や30分前などに、一度見直しの時間をつくるのもありだと思います。

JMOの詳細(数学オリンピック財団HP)

JJMO予選の特徴

JJMOは中学生が出る大会です。
問題の特徴は基本的にはJMOと同じですが、問題の出題範囲が少し異なります。

JJMOの詳細(数学オリンピック財団HP)

申し込みについて

例年、申し込み期限は団体が9月末、個人が10月末となっています。
かなり早いので忘れないうちに、申し込んでおきましょう。

具体的な対策!

いよいよ本題に入っていきたいと思います。
まずは最近の過去問を1, 2年分、解いてみましょう。(ここでの解けた問題数は2021年と2022年の平均を想定しています)


* 全然解けなかった~!という人は…
〇過去問の序盤の問題を中心に解きましょう。
〇勉強が足りていない分野は、教科書の章末問題をしっかり解けるレベルにしましょう。
〇好きな分野から勉強するのがおすすめです。
〇JMOを受ける人は、JJMOの前半の問題を解くととてもいい練習になります。

* 3問ぐらいは解けるぞ~!という人は…
〇数オリ特有の問題にまだ慣れていない人も多いので、過去問で練習を積みましょう。
〇簡単な問題、自分が解けた問題でもしっかり解説を読むようにすると良いです。
 自分と違う考え方を知ることができ、問題を解くときに活用できるかもしれません。
〇たくさんの問題に触れ、とにかく手を動かすことが大事です。
〇JMOを受ける人はJJMOの中盤の問題も練習になります。

* 5問以上解けるぞ~!という人は…
〇1つ得意分野を作りましょう!
 得意分野で後半の差がつく問題を解けるようになると予選通過も近いです。
〇苦手分野がある人は、前半のその分野の問題を解けるように底上げをしましょう。
〇難しい問題は解くのに時間がかかるので、1問あたり少し長い時間とって考える練習をしましょう。
〇「どうしてわからなかったのか」を自分で分析すると、次にやるべきことがもっと見えてくるかも知れません。

やはり過去問をなるべく多く解くことが大事です。
JMO, JJMOの公式問題集は5年分なので、図書館で借りたり、数オリ財団のサイトで見たりして10年、20年分を解きましょう。
これはすうけん部員の多くが実践しています!
数オリでは、典型問題は出ませんが、過去問と同じような考え方が使えることがあります。
また、市販の数学の問題集には数オリに出そうな問題があまり載っていないので、過去問が一番の近道です。

* 勉強法の一例
1年分解く(時間を計っておく。)
→解いた問題は解説を読む
→知らないor忘れている知識を確認
同様にして10年分の過去問を解く
→別の問題集をやり、その後解けなかった問題に挑戦する

過去問を解いていて「なかなか解けない!難しい!!」と思うこともあると思います。
そういう時は一度深呼吸して、解けそうなもの・面白そうなところからやってみるといいです。
焦らず少しずつ解けるものを増やしていきましょう!
また、答えを見て解き方を知ることも大切なことです。

ここからは分野別の対策とちょっとしたアドバイスを紹介します!

整数論

 まだあまり勉強したことがなければ、数学Aの「整数の性質」を青チャートや赤チャート、Focus Goldなどの参考書を使って一周することをおすすめします。
少し時間がかかるかもしれませんが、重要な性質をおさえられますし、受験対策にもなるので損はありません。

因数分解や展開は一番基本になります。
 序盤の問題だと因数分解だけでほぼ解けるものもあるので完璧にしましょう。

合同式も特に重要です。
 2や3で割ったあまりの処理だけでなくmod aなど問題文中の文字を法とする処理も頻出。
 フェルマーの小定理を使う問題もよく見かけます。

・整数は無限にあるので1,2,3と試していても完璧な答えにはなりません。
 しかし小さい数について調べることで規則性などに気づくことも多いので手を動かすのは大事です。
 (少しずるいことを言ってしまうとものすごく大きな数字が答えになることは比較的少なく「a≧5の場合には成り立たないことが分かる」など小さな数が答えになることが多いです。その意味でも手を動かすことは重要です。)
 不等式を使って、調べる範囲を絞るということも頭の片隅に入れておきましょう。

組み合わせ問題との融合で出題されることもあるので、場合の数も勉強しましょう。

・繰り返すようですが、「合同式」「不等式」「因数分解」は本当に大切です。

・時間があれば京大理系、一橋の入試問題の中にも練習になる問題があるので、取り組むことをお勧めします。

平面図形

まずは中学の範囲の定理をぱっと使えるようになることが大事です(範囲はJMOとJJMOでほぼ同じ)。
チャート等の問題集を使うのも良いかもしれません。
ただある程度問題の癖があるので、基礎ができてきたら過去問を中心にやる方が効率的でしょう。

必ず図は大きく丁寧に書きましょう!図が正確というだけで分かるor予想できることも増えます!

・そのためには定規とコンパスが必要なので普段から使いましょう。

・よく出るのは円周角の定理、合同・相似です。
 ほんとによく出るのでそれっぽい形を見つけたらどれかが使えないか考えてみると良いです。

・問題によっては解き方がいくつかあるので、自力で解けた問題も復習する事が大事だったりします。
 解けた!で終わらせず、別解を考えることも大事です。

・難しいのは補助線の引き方です。
 これは過去問をやる中で身につけるしかありません。(偉そうに言う私も補助線は苦手です…)

・思考法としては
 きれいに図を描く→相似や合同、等角を疑う、何がわかれば答えが出るか考える→それっぽいところに補助線引いて考察する    
といった感じです。

組み合わせ数学

JMO、JJMOどちらも同じ範囲と考えてよいです。
組み合わせの問題は数オリの中では比較的標準的な難易度の問題が出やすいです。
(もちろん予選でも最後の方の問題はとてもむずかしいです)

順列、組み合わせ、重複順列、重複組み合わせ、円順列などは確実に抑えておきましょう。

・チャートの場合の数が役立ちます。ただし確率の問題は出題されないのでやらなくても大丈夫です。

・標準的とは言っても数オリ独特の問題も多いので過去問をやるのは大事です。

・場合の数は最悪書き出すことで求められます。
 時間が余って見直しも終わった時は書き出すのも一つの手です。
 ただし、数えもれや重複には注意しましょう。

・もちろん書き出すとはいっても対称性などを見つけてパターンを絞ることは必要です。

・そうやって手を動かすことでちゃんとした解法が思いつくことも!(経験済み)

一通り終わったら

あとは代数をやりましょう。
優先度が高いわけではないのですが、例えば相加相乗平均などを使った最大値・最小値を求める問題などはやっておいて損はないです。

もし時間があれば数Iの三角比を勉強しておくと良いかもしれません。
幾何で余弦定理などを用いて力ずくで解ける場合があります。
もちろん正攻法ではないことが多いですが、予選は答えを求めることさえできれば良いので、こういった戦い方も頭に入れておくと良いでしょう。

オススメ参考書

最後におすすめの参考書を書いておきます。
過去問だけだと問題量が少ないので、しっかり演習したい方は以下を参考にしてください。
すうけん部員が実際に買っているのはコレ!

中学生・JJMO向け
・日本評論社『JJMO公式過去問集
 前半の問題編・知識編がとても役に立ちます。もちろん後半の過去問も。
・数学書房『中学生からの数学オリンピック(第2版)』
 予選対策300問本選対策300問、易しい問題から難問まで幅広くカバー、第3部の知識も充実。
・東進ブックス『中高一貫ハイステージ中学数学代数・幾何
 中学数学(高校の基礎も含む)をかなり厳密に勉強できる。
他には…参考書案内(数オリ財団HP)

高校生・JMO向け
・日本評論社『JMO公式過去問集
・『中学生からの数学オリンピック』
・日本評論社『パーフェクト・マスター』シリーズ
 「初等整数」、「平面幾何」、「組合せ論」、「代数・解析」の4種類あります。
・数研出版『チャート式 基礎からの数学I+A』(青チャート)、『チャート式 数学I+A』(赤チャート)
 高校1年の数学をマスターできる
他には…参考書案内(数オリ財団HP)

分野別では、『美しい不等式の世界』(朝倉書店)・『三角形と円の幾何学』(海鳴社)なども良書です。

個人的な見解ですが、パーフェクト・マスターが特にオススメです!
私はこれを使って勉強していました。これは数学オリンピック財団が公式でおすすめしているものという安心感もあります(誤植が多いのが欠点ですが…)。
順番としては整数→組み合わせ→平面幾何の順が良いと思います。よく出題されるものであり、比較的習得が早そうな順番です。

また、最近では本以外にウェブページでも、数学オリンピックに関する有益な情報を得やすくなりました。
例えば、ご注文は数オリですか? というサイトがありますので、よろしければこちらもご覧ください。数学オリンピックメダリストの方々が作成されたペ-ジです。

 

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました!

数学オリンピックはめちゃくちゃ楽しいものです。
何しろこんな記事を書いちゃうくらいですから。
JJMOに2回、JMOに2回出場しました。
その結果はというとJJMOで1回、JMOで1回本選に行けましたが、その先には進めませんでした…。(かなり勉強はしましたが。)
それでもとてもいい思い出です。
もう受けることはないのですが、未だに数学オリンピックの問題は好きでたまに解いたりしています。

この記事を読んだ方が「数オリ試しに出てみよっかな。少し勉強してみよ!」っていう気持ちになっていただけたらとても嬉しいです。
一人で出ても楽しいですが、ぜひ友人や先輩・後輩を誘ってみてください。
一緒に勉強する仲間がいることがモチベーションにつながるし捗るし何よりも楽しいという良いこと尽くしです。
こういう経験も一つの青春かもしれませんよ。


(おまけ1)予選の体験記本選の体験記も良かったら読んでみてください!

(おまけ2) 数オリ以外の数学のコンテストとして、オンラインで参加できる

OnlineMathContest というのもあります。数学オリンピックのような問題も出題されたりします。